建築設計室Morizo- 内田利恵子

スケッチ

始まりは妄想から

私はイメージして提案することを生業としています。2016年、事務所を開設して20年目になりました。目指したい建築が、ようやく見えてきたように思います。つられるよう自分の暮らしの輪郭がうっすら描けてきました。もし、「どうぞ、Morizo-スタイルで提案してください」と言われたら、余分なものをできるだけ減らした愛着の持てる空間に、気分や季節を少し添える暮らしが叶う空間を提案したいです。大切なもの、残したくなるものだけに囲まれる暮らし。

模型

住宅設計にたずさわり25年。未だに半人前ですが、積み重ねてきた人生経験も仕事に影響を与えてくれていると強く感じます。一つとして同じ暮らしはなく、私の経験とも一致しない住まいの提案は無限で、夢のある仕事です。話を伺いながら立地や環境に合う提案をするべく妄想します。

「あーここに窓があったら気持ちいいかなー」
「ここでコーヒーを飲んだらくつろげるなー」
「あと数年で子供たちは巣立っていくかもなー」
「将来は孫たちが遊びに来るかなー」

などなど、妄想はふくらみます。この設計の始まり段階が一番好きです。

器プロジェクトのスケッチ

器プロジェクトの模型

器プロジェクトの器の入口

たとえば器プロジェクトの「器」

たとえば器プロジェクトの「器」。いい素材と職人さんの緻密な作業。両方が絡み合って醸す空気感を作ってみたくて、小さな和室を思いつきました。こんな空間どうだろう? 暗いほうがいいかな? 開放的ならどんな感じ? ヒントがありそうな場所へ足を運びます。この段階をうんと楽しみます。

イメージができあがってくると、頭の中の映像を紙に描いたり、模型におこします。「アレ? 違うな」と思ったら、最初から考え直し。行きつ戻りつをくりかえします。そして、「ヨシ! これでいこう」と確信したらグンと現実的な作業がはじまります。

図面

図面は現場の言語

より具体的に、寸法や材料、納まりや施工までを考えた実施設計の図面をおこします。三畳の和室ですら、図面は一、二枚で納まりません。一軒の家なら数十枚の図面を書きます。 図面は、作り手に意図やイメージを伝えるツールです。いわば現場での言語。 図面を読んで作り手が動く。一本の線の意味もおろそかにできないという緊張感があります。

設計と一口で言っても

「知らなかった...」と驚かれるクライアント。その一つが設計の業務内容です。図面をおこして終わりではありません。設計と一口に言っても、ヒアリングからはじまり、状況調査、検討・検証を重ね建物の引き渡しまで立ち会います。Morizo-の設計の多くは、エンドユーザーへの提案です。販売会社へ向かって設計する建築と違い、そこに住む方のライフスタイルや家族構成などが設計プランへ直に反映されます。暮らす人の顔が見える関係です。この関係は、Morizo-のスタイルに強く影響を与えています。

三者が一つの方向へむかう

建築物の場合、法律や安全性、耐久性、メンテナンスまでを勘案して、スケジュール、コスト、条件や状況をもれなく監理しなければなりません。円滑な進捗が必須ですが、なかなか骨を折ります。事情やタイミングでスムーズに進められなかったりすると、正直、財産をあつかうプレッシャーでしんどくなることもあります。でも、建築とは、確実に前向きで、とても幸せな行為。建築に関われること自体が喜びでもあります。クライアントと作り手と設計者、三者が一つの方向に向かって、さっきまでなかった場をつくり出す。その何にも変えがたい経験に毎回立ち会えるのです。

私はものは作れませんが、作っている人の姿を使う人へ伝えることはできます(産地を訪ねる, 器プロジェクトのメンバー)。素材生産者さんや加工、流通業者さん、建築の現場ではお目にかかれない人にまで思いをはせて感謝を分かち合えるものづくりができたらと思います。相談や依頼がある限りものづくりの本質を大切に邁進していきます。

建築設計室Morizo- 内田利惠子


器プロジェクト

前田さん 未来工房さんの制作現場 前田さん