産地を訪れる ─ 和紙
2015年夏・和紙の里 越前
2015年夏、和紙の里越前を訪ねた。
水も空気も美しいこの地で1500年も前から高品質の和紙が作られている。
7軒の工房や商店を巡り驚いた。作っている製品や得意とする工法が各社違うのだ。
この小さなエリアで他社と競合することなく個性をもち、かつ昔からの高い品質を保っている。
実際の和紙づくりをみて、いまさらながら改めて和紙のシンプルさに魅かれる。植物の皮と水を植物の根から出る粘液で攪拌して漉く。職人同士は言葉を交わさず相手の呼吸だけで瞬間をくみ取る。いたって少ない要素と人の手間だけで千年持つ紙ができる。余計なものを加えないからこその強さ。そこに学ぶべきものが沢山あるように思えてならない。
そんな和紙の魅力にひかれて、この職を選んでこの地に来る若い人。営々と続く和紙作りの文化を守る人。訪れる人を優しく暖かく歓迎する地域の人。沢山の出会いと日本の原風景のような自然が和紙への関心を深めてくれる。
他の産地でもきっとこうやって静かに引き継がれている和紙づくり。世界に誇れるこの美しい素材をこれからもつくり続けていける環境を、使い手側が守っていかないといけない責任を強く感じた出会いだった。