器プロジェクト
情報とモノにあふれたこの時代にシンプルに心が落ち着く空間を提案してみたい。ひと時でもいい、小さくてもいい、たまにでもいい日々の片隅に自分を取り戻す場所、大切な人を招く場所を持っておく。人生の間を取る小さな空間。
本物の木や畳や襖、普通に使っていた素材が今や特別なものになりつつある。だけど、使い手の少しの意識でこの先も普通であり続けることが可能だと思う。
まだ特別でない本物の素材に囲まれて暮らす。すべてでなくても少しでも。素材を、技術を、こだわりを、愛でる空間を少しでも。あなたの家の片隅に。
三畳の和室・「器」
木、紙、草、硝子、本物の素材を使い組立分解できる空間です。これを「器」と名付けました。入った人は素材や空間をどう感じるか?何も感じないか?きっと何かが伝わるはず。そんな願いを込めて形にしました。
日本の文化が特別なものになったり途絶えてしまうのが惜しすぎる
2015年12月にプレスタートしたこのプロジェクトは、場所を変え、切り口を変え、2~3年を掛けて様々な形で発信していきたいと考えています。できるだけいろんな方に、いろんなシーンで見てもらう。さまざまなジャンルの人や物とコラボレーションしてみる。いつ、どこで、だれと、どう使うかで趣は変わるはず。いい出会いと、ことの始まりを見つける巡回展。これを携え日本中を行脚して、チャンスがあれば海外へも!どこまでできるかわからないけど可能な限りやってみたい。ひとつひとつを丁寧に発信することできっと思いは伝わるはず。そんな試みです。
また、このプロジェクトは、暮らしに豊かさを添える「器」の提案により、使い手とそれぞれの素材を生産し、加工する作り手とを繋ぐことも目的としています。
使い手は、誰がどんな思いで作っているのか、顔が見えることで、より愛着を持って扱い、使い続ける価値のあるものを選ぶ。一方、作り手は、だれがどう使っているか、使ってどんな気持ちになるかを知ることで、良質なものづくりを目指し続けることができ、技術を継承する糧になる。はず。そんなことは妄想だと言う人もいるかもしれないけど、これまで「普通」に使われてきた優れた技術や素晴らしい素材と、それを使い続けてきた日本の文化が、特別なものになったり、途絶えてしまうのが惜しすぎて、今ならまだ間に合うと信じ、「器PROJCT」スタートさせました。
ステンドグラス作家、木工家、表具師、畳職人、設計士が力を持ち寄り、ここに一つの「器」ができました。沢山の方に見て頂き、体感して頂くのを楽しみにしています。
頼まれてもいない「器PROJECT」を始めました
私の仕事は住宅設計です。普段実務の中ではなかなか表現できない自分の住宅に対する思い、素材生産者さんや職人さんのこと。それらを知ってもらえたらもう一歩進める気がしています。ホントにいいなと思える暮らし方と住む人の個性が活きる家。
便器が勝手にあいたり、電気が勝手についたり、便利なものは沢山沢山あるけれど、余分な機能よりももっと大切なこと、いっぱいあります。ただ暮らすこと、日々をおくること、その繰り返しこそが美しいのですが、内面的な思想や好みを空間に盛り込むことで、もっと自分らしく、心地いい時間を住まいや暮らしにアウトプットできるのではと思います。
規格の商品や世の中の流れに合わせるのではなく、使う人が作る人にまで想いを巡らせることができれば、より豊かな気持ちで使うことができ、モノを選び、扱い、求め続けることができる。作り手側も、創り出したものにのせた思いが伝わり、求められ続けることで、ニーズをとらえ、継承し、生業続けることができる。そんな循環に自分も設計士という立場で参加することができたらうれしいと思っています。
そんな思いを持っている人に出会うため、そんな思いに共感してくれる人を探す為、頼まれてもいない「器PROJECT」を始めたのかもしれません。資力と体力に限りがありますが期限付きで、全力で、やってみたいと思っています。