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前田秀幸さん ー 株式会社未来工房

木工

普通の工場です。それがかっこいい、グッときます。オーダー木製家具を制作しています。工場をぐるりと見回して、目に飛び込んでくる道具。スッと手に取れるよう整えられ、キリッとしています。

株式会社未来工房

種類、現場ごとにしまいやすく、とり出しやすく並ぶ材料。ぞんざいに扱われず定位置に納まっています。だからかっこいい、グッとくる。

端材を分類している一角に目がとまりました。無垢の木は、端材であってもくっつけたり削ったり、サイズを自在に変えギリギリまで使えます。無駄なく材料を使い切る姿に感銘を受けます。

木に触りながら死ねたら幸せ

2015年、前田さんに初めてお目にかかりました。昨年知り合ったばかり。なのに、ずっと前からの知り合いのよう。芯が強い、という印象です。熊本のご実家は正統派建具を作る建具屋さん。「木に触りながら死ねたら幸せ」という前田さんには、生粋の職人の血が流れている。

実は前田さんの作業姿を目撃したことがありません。どうやらスタッフの方々もあまり目にしないとか。なぜなら、みなさんが帰った後に道具をにぎるからです。

工場では、5人の職人さんが所狭しと作業しています。プレナーやプレス機、大きな機械を譲り合って使います。前田さんはそれらの作業を邪魔しまいと、工場がひっそりしてから一人作業しはじめます。それに昼間は打ち合わせ、段取り、見積もり、請求など社長業をこなします。

この工房から店舗や施設の什器、オーダー家具などの製品が生まれます。素材は、木材以外にもメラミンやポリ合板などを扱います。大小、用途、形状などがバラバラの製品。6メートルのプレス機を使った什器から小さい照明のフレームまで制作します。

製品によっては、取りかかる前に原寸大で試作し、最良な加工方法を確かめます。訊ねた日、若手職人さんが照明シェードを試作中。前田さんは細かく指示せず、職人さんの知恵や技術を引き出します。

この仕事は一人ではできない

「ちょっと何かやってみてくださいよ」と私が声をかけると、前田さんは言葉少なげに機械を操作しはじめました。4メートルのパネルがスパッと切れる機械が動きます。木工所には制作場所と機械が不可欠。高額な機械への設備投資はたいへんですが、スピーディで高品質なものづくりに対応する体制を整えなければなりません。そして、機械の維持、メンテナンスも大事な業務です。

この地に工房を立ち上げて16年目。「一番たいへんなことは何ですか?」と尋ねました。返ってきたひと言は、「・・・んー、人かな」。

店舗の仕事はスピード勝負。納期・納品にまつわる返事を予想していた私には意外でした。「仕事の段取りやムチャな注文は、がんばったら何とかなる」と静かに話す前田さん。「何とかなる」に自信が伺えます。それとは裏腹に、スタッフが気持ちよく働ける環境をつくり、各自のスキルを生かして会社に貢献してもらうには、ご苦労も多いようです。きびしい状況でもがんばってもらわないといけない時もあります。スタッフのやる気は会社にとってとても重要です。

「この仕事は一人ではできない」が前田さんの口癖。若手の育成から従業員への気配りまで、経営者の仕事はエンドレスです。

「前田さんってどんな人ですか?」とスタッフの方へ聞いてみました。ベテラン職人さんがそっと耳打ちするような小さな声で教えてくれました。

「優しくて 大きな人」

聞こえた前田さんが照れています。私にはなかなかつかみどころのない前田さん。スタッフからの信頼は厚く、困難な状況をともに乗り越えてきた結束を感じました。うらやましいです。毎日の注文に応えながら、新しいチャレンジがまだまだある未来工房。木が大好きな前田さんや職人さんたちの気持ちがこめられた木製家具をこれからも期待しています。

株式会社未来工房
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