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中野智佳子さん ー 中野表具店

表具

中野智佳子さん、表具師&デザイナー。出会ってから5年がたつのに、いまだにこわいです。チャキチャキの大阪のお姉ちゃん。

デザインを学びウェブや紙面のデザインを手がけて、十分になりたっていたのに、ある時それをスッパリ辞めて家業に入ったのです。事業主を相手にデザインをするよりも、その先にいるエンドユーザーに向けて直に仕事する楽しさを知ったのだそう。

中野表具店 中野智佳子さん

デザイナー、技能士、家業の一員、多才ゆえに

もうからない。大変だ。と言いつつ、もとの仕事にもどる気はないようなのです。が、とにかく文句が多い。いまだにこわい理由は設計士を責める、間接的に私をいじめるのです。たとえば、本来の建具のサイズを大きくこえる設計で表具の依頼がきた日には、「最悪!」を連発するのです。

木でつくられる建具は癖や湿気でそります。本来、そりを見越した作り方をしているのですが、サイズが大きすぎるとそのそりも大きくなり、これまでの技術や知恵ではカバーできなくなるのです。

しかも材料や運搬に対しても別途検討が必要で、それはメンテのたびに発注者の負担となるのです。中野表具店として最悪ということではなく、あとあと大変になる発注者のことを考えずに、設計することに対して最悪と言っているのです。

ごもっともなのですが、その言い回しをオブラートには包みません。その反面、デザイナーとしての思いもわかり、他にないものを考える意味もよくわかる。彼女は技能士として、デザイナーとして、また、家業をささえる一員として、悩める日々を送っているのです。

自分で確かめて身をもって知る

自分で確かめたい。身をもって知りたいというのが、この人のモットーなのか、数年間表具の技術を学び、昨年ついに表具師になってしまったのです。

また、軸をつくるなら、書や水墨画のことも知らないと表装を頼む人の気持ちがわからないからと、これらを習い始め、書ではたちまち賞をとってしまいました。以前から興味があった篳篥(ひちりき)を習いはじめると、1年もたたないうちに越前の和紙祭で、神事の雅楽奉納を地元の人に混ざってやってしまうのです。

のみこみがはやく、そもそもいろんなことに器用なのですが、机上の知識だけでなく、即実践する。この人の機動力には目を見張ります。

初めての試みにも物おじしない

器プロジェクトへの参加は、廃れていく襖にまつわる素材生産者さんや、職人さん達の仕事を記録するため、ちょうど取材をもくろんでいた矢先だったこと、産地や素材を紹介する機会にもなると思われたからでしょう。着々と産地を訪ね、職人さんを取材したり、映像化に取りかかっています。

サクサクと使ったことのない編集ソフトを使いこなし、わずか数カ月で越前手漉き和紙の「本鳥の子」編を仕上げてしまいました。初めての試みにも物おじしないすごい人です。

紙戸屋・中野表具店と改名したのは、智佳子さんのアイディア。表具をもっと身近にと、ウエブサイト上でさまざまな情報を発信しています。仕事のちがいや、襖の張替え方まで、わかりやすく伝えます。家族経営の小さな会社にもかかわらず、オリジナルデザインを襖や障子紙に盛り込み、数年で他にない表具屋さんとなりました。デザインができる表具師、それ自体貴重な人材ですが、発想力や完成度の高さは、さすがプロのデザイナーならではです。今後の智佳子さんにもまだまだ注目していきたいと思います。

中野表具店
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