和田友良さん ─ 戸夢窓屋
実は、20年以上も前に和田さんとはお仕事をご一緒していました。事務所に勤めていた時の現場で神戸のピアノバーでした。5年前、ある住宅物件で再会。私が設計事務所を独立し15年が経っていました。
作風も、人柄も以前と変わりなく、穏やかで品の良いステンドグラスを創る和田さん。控え目でクールなデザインの作品は、和の住まいにも調和して、さりげない豊かさを演出します。
硝子が好きで、いいものが見つかるとつい買ってしまう。取材のこの日も、「このガラス見てー! 何ともいえんやろ~。」とはしゃぐ65歳。自身も認めるガラスバカ。いつもガラスやデザインのことで頭がいっぱいなのです。そんな和田さんの思いを引き継ぐお弟子さんの山下くん。黙々とガラスを削り、寄せる。師弟共にこういった作業をするのが至福の時というから、二人は生粋の職人さんですよね。
大きな安心感
私は図面やスケッチ、模型などで設計のイメージを伝えます。そして、和田さんにしっかりと空間の役割と使われ方が伝われば、あとはデザインをすっかりお任せできる安心感があるのです。お互いの思考を理解できていてこそ、このおおらかなキャッチボールでいい空間を目指せるのだと思います。
また、圧倒的な技術力と、良質で豊富な材料を持っています。そして何より、実績とステンドグラスへの思いが信頼を生むのです。私がクライアントに、「後はお任せしたほうが素敵なものが出来上がりますよ」と言い切れるのはそんな大きな安心感があるからだと思います。
すべてがハンドメイド
華やかなステンドグラスを創る工程は、とても多岐にわたります。丁寧に検討されたデザインに始まり、硝子の選定、配色配置、原寸図起し、型紙作り、硝子カット、削り加工を経て、やっと「寄せ」という工程に入ります。ハンダ付けの後パテ処理を行い、さまざまな工程を経て、工房での制作は終わるのですが、それを大切に現場に運び、窓に納まって光を受けたときがやっと完成ということなのです。すべてがハンドメイド。手仕事の塩梅のせいか、機械でシステマチック作るものとどこか違うのです。この手間暇かかる職人の技術も是非、伝えたい。と、つい思ってしまいます。
作家より職人
正直、豪華なデザインのステンドグラスの方が見栄えもするし、売り上げも伸びる。だけど、一番大切なのは目指す空間の中で、どうあるべきか?ということです。例えば、教会の巨大な空間で信仰を集めるために必要なステンドグラスと、日本の住まいのなかにそっと豊かさを添えるステンドグラスとでは、求めるものが違います。使う人の趣向や空間との調和を細密に検討してデザインします。僅かなラインのバランスさえ何度も調整する。そんな真摯な姿勢を目にすると、「ステンドグラス作家」に「職人」気質をかさねてしまいます。
日本の窓はもっと素敵にできる。シンプルなデザインでもステンドグラスには力がある。もしかして自分は、ステンドグラスという技法を使ってデザインガラスを創っているのかもしれない。と語る和田さん。「僕はパーツ屋だから」といつも言われるのですが、常に空間の質を上げたいと考えている和田さんは、もちろんただのパーツ屋さんではなく、私には頼りになる空間デザインのパートナーなのです。これからも、素敵な窓辺を創り続けて頂きたいと願います。